本名で堂々と、お帰りなさい―。2013年8月に国立療養所大島青松園(高松市)で死去した、詩人でハンセン病元患者の塔和子さん(享年83)の遺骨が17日、両親の眠る古里・愛媛県西予市明浜町田之浜の墓地に分骨された。「両親と一緒に入りたい」という切ない願いがかなえられた。尊厳回復に向け、約70年にわたり伏せていた本名の「井土(いづち)ヤツ子」も公表され、墓碑にしっかりと刻み込んだ。 塔さんは1942年に13歳で発病し、翌年、同園に強制隔離された。肉親らと引き離される過酷な状況下で詩作に励み、生きる希望を見いだした。隔離された患者は、家族らに差別による迷惑が及ばぬよう偽名使用を求められ、夫から「塔和子」というペンネームを付けてもらった。 17日の分骨式には、親族と地元の同級生ら関係者計約30人が出席し、弟2人が遺骨を両親らが眠る墓に納めた。キリスト教徒だった塔さんをしのんで賛美歌を歌い、バラの花を手向けた。
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