深い緑に包まれ、田畑が広がる中山間地域の愛媛県今治市玉川町鈍川地区。過疎高齢化が進む中、地区への移住を希望する若い夫婦が増えている。「豊かな自然と古き良き伝統に囲まれた生活を送りたい」との思いに住民も呼応し、手を携えて地域再生に乗り出している。 鈍川地区は市街地から車で30分ほどの距離にあり「伊予の三湯」の一つ、鈍川温泉で知られる。市玉川支所によると、1950年に1700人余りだった人口は、2013年12月には約500人にまで減少。65歳以上が4割を超えている。 市中心部に設計事務所を構える徳永英治さん(41)、飛香さん(42)夫妻は今春、同地区に移住する。英治さんは「昔ながらの技術を残し、自然に優しい家づくりをしたい」と畳表を手織りする技術を習得。市内で工房を探していたところ、同地区神子之森集落の里山風景が気に入り、移住を視野に旧集会所を工房として借りようと10年末、越智実鶴自治会長(70)を訪ねた。 集落維持へ危機感を募らせていた越智さんは住民に説明。草刈りなど集落の行事に2人を招き、住民と交流する場を設けた。当初は地縁血縁のない人物と距離を置いていた住民にも少しずつ理解が広がり、晴れて受け入れが決まった。
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