2012年1月の全基停止以降沈黙してきた四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)で、作業員の出入りが活発になっている。原子力規制委員会による新規制基準の7月施行をにらみ、安全対策工事など伊方3号機の再稼働に向けた準備が佳境を迎えているためだ。しかし5日、原発内で起きたトラブルの報告遅れが発覚。再稼働の行方は不透明さを増しており、約1年ぶりに客足が戻った同町旅館関係者からは「一時的なにぎわい」との見方が出ている。 午前8時。佐田岬半島を縦断する国道197号と原発を結ぶ同町九町越の県道に、原発構内に向かう従業員や作業員を乗せた大型バスや乗用車が長い列をなす。全3基停止前、各基で13カ月ごとに行われていた定期検査時と同じ光景だ。四電によると「正確な数は把握していないが、定検と同程度の2500人前後が作業しているとみられる」。 四電は1月に示された新基準の骨子案を踏まえ、3号機原子炉の冷却水確保や非常用電源の強化など6項目の追加安全対策工事を4月から開始。6月末の完了を目標に同時並行で工事を進めている。 旅館や商工業者でつくる伊方町商工業協同組合は「一息ついているところだが、宿泊施設の客足増加は一時的なものと捉えている」と現状を認識。先行きへの慎重な見方を崩せずにいる。
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