そこかしこで菜の花が風に揺れる愛媛県四国中央市土居町土居の関川の土手。道の脇に地元住民らが熱心に手を合わせるお地蔵さんがある。目元穏やかに60年近く地域を見守ってきた「日切地蔵尊」だ。家内安全や安産、就職、受験合格などに御利益があると親しまれ、参拝者は後を絶たない。 「日切」とは、期限を決めて祈ると願いをかなえてくれるとの信仰から名付けられた。地蔵尊の世話人で近くの農業鈴木郁朗さん(78)は「関川の河原に流れ着いていたのを1955年ごろ、住民らが土手に引き上げ、いおりを建ててまつった」と語り「どこから来たのかは分からない」と首をかしげる。85年にいおりを新築し、現在は別の地蔵2体とともに安置している。 祈願成就のうわさが広まり、地元だけでなく県外からも大勢が訪れ「お供えの線香が途切れない」と鈴木さん。15年以上毎朝、家族の健康を祈る土居町上野の農業真鍋禎子さん(82)は「拝みに来ないと忘れ物をしたような気持ちになる。元気なうちは通い続けたい」とほほ笑んだ。
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